2026年1月25日、北海道は札幌圏を中心に大雪となり、新千歳空港が陸の孤島と化したニュースが全国を駆け巡りました。
JRは全線運休、車がまともに走れない道路は生活に大きく影響し、北海道は住むところじゃないと思った人もいたと思いますが、道民にとってはこの日もある意味で日常。
そんな北海道には、厳しい自然で生きる中で培われた、独自の季節用語が多数存在しています。
帳尻合わせ

帳尻合わせとは、日ごとに積雪が増えていく降り方ではなく、なにもないところにいきなり大雪が降ったときに使われる道民ならではの冬の言葉です。
特に近年は、1月になっても雪がほとんどないのに、2~3月に一気に降り積もるというパターンが多くなっていて、道民の間で「このままで終わるとは思えない」「そのうちドカ雪が来るよ」という会話から、本当にドカッと雪が降ると「やっぱり帳尻合わせてきたわ」となるのがもはや定番となりつつあります。
2025年は北海道内では降雪量が少ない帯広で、一晩で5㎝から1m29cmと一気に降り積もり、市内交通網が完全にダウンしました。
【5cm→129cmに】
— ウェザーニュース (@wni_jp) February 4, 2025
帯広では昨日夕方5時には5cmだった積雪が、今朝9時には1m29cmになりました。
6時間降雪量、12時間降雪量とも同地点での統計史上1位の値です。https://t.co/Wq2EUTW8M5 pic.twitter.com/q4atKbWp7c
ちなみに今回の札幌はこんな感じ。
<雪は落ち着くも積雪>
— ウェザーニュース (@wni_jp) January 26, 2026
今日26日(月)は冬型の気圧配置が緩み、北日本の強い雪は落ち着いています。
札幌市で105cm、青森市で129cm(17時時点)など、市街地でも1メートル前後の積雪となっている所があります。しばらくは道路や交通への影響、落雪や雪崩等に注意が必要です。https://t.co/RMRlzSZDBn pic.twitter.com/8tjCRbxmIc
気象庁のデータによると、前日1月24日の札幌市の最深積雪は66cm。
ところが翌日の25日は112cmと、一気に倍近くになりました。
帳尻合わせがくるとJRやバスが止まり、道路は大渋滞し、スーパーやコンビニが品薄になったりと、生活はとても過酷になります。
一方で、大雪だからこその光景に心が温まったりもします。
家の前の除雪をしていたら、雪をかいて歩いてきた人に感謝されたり。
豪雪の中を走ってくる郵便局のバイクや宅配便に感謝したり。
スタックして動けなくなった車を見つけたら、どこからともなくわらわらと人が集まってきてみんなで押したり。
あ、車がスタックして押してもらったときは、感謝の気持ちは伝えずにそのまま走り去るのが道民の常識です。
またスタックしたら大変なので。
なお、帳尻合わせという言葉が道民でよく使われるようになったのは、2020年くらいといわれているので、古くから使われている言葉ではないよう。(私が子どものときは使っていなかった)
気嵐(けあらし)

気嵐は、放射冷却現象によって冷え込んだ冬の早朝に、陸地と水面との温度差によって発生する霧のことです。
嵐という字が入っていますが、風が強かったり太陽が昇ると消失してしまうため、北海道でもなかなか見られない自然現象のひとつ。
北海道の留萌地方(日本海側)の漁師が発祥の方言とされ、気象用語では蒸気霧といいます。
北海道では函館や留萌、紋別、根室、釧路などの海岸部や、十勝川や阿寒湖、小樽運河などでも見られることがあります。
内陸部のダイヤモンドダスト
海沿いで多く発生する気嵐に対し、主に内陸部の川や湖などで以下の条件が揃うと見られるのがダイヤモンドダストです。
- 気温が−10℃以下で無風
- 快晴の早朝
- 適度に湿度がある
ダイヤモンドダストは、空気中の水蒸気が凍り、朝日に照らされることでキラキラと輝く現象です。
何度か目にしたことがあるのですが、とても神秘的で言葉を失う光景でした。
とにかく寒いどころか痛いくらい冷えるので、もう行かなきゃと思いながらも、つい足を止めてしまった記憶があります。
旭川や美瑛、陸別、弟子屈、名寄といった寒暖差の激しい地域で多く見られます。
根雪(ねゆき)

根雪とは、降り積もった雪が春まで溶けない状態を指す言葉です。
地域によって違いますが、道内各地例年11月上旬~12月上旬にかけて初雪が観測されるものの、しばらくは降っては溶けてを繰り返して積もりません。
12月上旬以降、気温がさらに下がると雪が溶けずに残り続け、根雪となります。
多くの道民にとって、北海道の冬は根雪になってからが本番という感覚があるので、雪が降っても根雪にならないと、秋とも冬ともいえない気持ちになります。
大変なことも多い雪ですが、根雪になりそうな雪の降り方や気温に、「いよいよか」「そろそろかも」とどこか覚悟を決めるみたいな瞬間があるかも…。
ちなみに、根雪の解釈や概念は地域によって異なり、北海道以外でも雪国で使われる言葉なのだそう。
そのため、気象庁では定義を設けていて、「観測的における積雪が30日以上継続している状態」を指し、気象用語では「長期積雪」と呼んでいます。
雪虫(ゆきむし)

雪虫とは、トドノネオオワタムシというアブラムシの一種で、その名の通り白い綿のような見た目をして、北海道では雪虫が飛ぶと初雪が降るといわれています。
見た目が雪っぽいだけではなく、手を振った風圧でも飛べなくなり、手のひらに乗せると体温で弱ってしまうので、ふわふわと宙を漂うように飛ぶ姿も余計に雪っぽいです。
北海道で雪虫が初雪の知らせといわれるのは、6~10月頃までトドマツで過ごしたトドノネオオワタムシが、ヤチダモの木に移動する10月上旬から中旬に姿をよく見せるようになるタイミングで、札幌などで初雪が降ることが多いからだそう。
民間気象情報会社ウェザーニューズが調査したところでは、雪虫が飛んでから21日前後に初雪を観測したという結果になっています。
雨一番

雨一番は、立春(2月上旬)以降に雪ではなく、雨が降ることを指す言葉です。
早いところ(函館などの道南地方)では2月中旬から下旬ころ、札幌では3月中旬くらいに雨一番が観測されることが多く、この時期に雨が降ると道民の多くが「長い冬が終わって春が近づいている」と感じますが、正式な気象用語ではありません。
ちなみに、北海道には春を告げる春一番は吹かないので、春を感じるのは風ではなく雨です。
でも、天気予報などで「今日は雨一番が降りました」とは聞かないかも…。
リラ冷え

リラ冷えは、本州でいうところの花冷えと同じように使われる言葉で、「寒の戻り」という意味があります。
リラとは英語名ライラック(lilac)のことで、ライラックは札幌市の木に指定されていたり、大通公園で毎年ライラック祭りが開催されていたりと、道民にはわりと馴染みのある花。
5~6月にかけての北海道ではライラックが開花し、色とりどりの花が道を華やかにしてくれますが、オホーツク海高気圧の影響で、冷たい北東の風が吹き込んで霧雨や曇りといったぐずついた天気になりやすく、20℃前後の気温が一気に10℃以下まで下がることがあります。
これをライラックの開花時期とかけてリラ冷えといいます。
道民的には「せっかく暖かくなってきたのに」という気持ちがありつつも、どこか情緒を感じることも。
この時期に北海道に旅行するときは、たとえ天気予報が晴れでも、朝晩の冷え込みや急な悪天候に備えて、重ね着できる長袖や上着などを用意しておくといいですよ。
リラ冷えという言葉が広く浸透するようになったのは、北海道出身の作家・渡辺淳一さんの小説『リラ冷えの街』からといわれています。
蝦夷梅雨

蝦夷梅雨とは、6~7月にかけて小雨が続くことを指す言葉です。
北海道は梅雨がないとされ、気象庁の梅雨入り・梅雨明けの発表にも北海道は含まれません。
しかし、7月中旬から下旬にかけて、本州を北上した梅雨前線が東北北部や津軽海峡で停滞すると、近しい場所の道南や道央の太平洋側では小雨が1~2週間降り続くことがあり、これを蝦夷梅雨と呼ぶことがあります。
また、さきほどのリラ冷えの原因となるオホーツク海高気圧の影響で、5~6月にオホーツク海側や太平洋側では長雨が続くと、これを蝦夷梅雨と呼ぶこともあるようです。
蝦夷梅雨は正式な天気用語ではない上、北海道は広いので該当地域に住む人は同じ時期でも雨が降らないので「蝦夷梅雨なんてない」という声もあります。
私も札幌圏に住んでいるときは、蝦夷梅雨という言葉はあまり聞きませんでした。
どちらにしても、蝦夷梅雨は本州のような高温多湿状態で雨が降り続く状態とは違い、気温はそこまで高くないので、蒸し蒸しせずに比較的過ごしやすいといわれていますが、ここ最近は7月の長雨は北海道といえども気温も高く、「これはもう梅雨なのでは」と思うこともあります。
ガスがかかる

ガスがかかるというのは、主に北海道東部(釧路や根室)地方で「霧による視界不良」の状態を指す方言です。
霧=ガスという正式な由来は見当たらなかったのですが、オランダ語のgas(気体)が語源とされているようです。
私は釧路や根室出身ではないのですが、道民には比較的馴染みのあり、霧でよく見えないと「ガスってる」といったりしますね。
なお、日本でもっとも霧が発生する釧路では、服や髪が湿るほど濃い海霧を「じり」といい、ガスと使い分けているそうです。

じりは、北太平洋高気圧の温暖湿潤の空気と、寒冷な親潮による寒暖差によって発生するとされ、6~8月に見られるそうです。
特に7月下旬から8月は発生しやすく、釧路の代表的な観光地である幣舞橋や釧路湿原がじりで覆われ、幻想的な光景になります。
おわりに
今回のような災害級の大雪に見舞われると、雪の降らない地域をちょっとだけ羨ましく思ったりもしますが、北海道に生まれ育ち、50年以上住み続けている私は、もし生まれ変わってもまた道民として暮らしたいと思っています。
冬は寒くて旅行に向かないと思われがちな北海道ですが、気嵐やダイヤモンドダスト
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