内向型と外向型の人格分類は、スイスの心理学者カール・ユングが提唱したもので、今から100年も前からありました。
ここ2~3年の間流行しているMBTIも、ユングのタイプ論を元にアメリカで誕生したものです。
ちなみに私はINFJ(提唱者)で内向型です(しかもINFJの中でも感受性が強く、自己否定が強いTタイプ)。
50代になった今でこそ内向型の自分を受け入れていますが、そこに至るまでには紆余曲折ありました。
きっと同じように、内向型である自分を認められず悩んでいる人は多いですよね。
そこで今回は、内向型から外向型に変わりたいと思っている人に向けて、「変われない絶対的な理由」と「外向型と思っていたら実は内向型だった私の体験談」をお届けします。
【結論】内向型から外向型には変えられない
どんなに頑張っても、内向型の人が外向型になることはできません。
項目 | 内向型 | 外向型 |
関心 | 内面に向きやすい | 外界に向きやすい |
決定 | 自分の主観に従う | 周囲の状況に従う |
社会性 | 消極的でひとりを好む | 積極的で社交的 |
仕事 | ひとりのほうが捗る | 人と一緒のほうが捗る |
適応 | 遅く晩熟 | 早く早熟 |
思考 | 理論的・内省的・慎重 | 現実的・実行優先 |
なぜなら、内向型や外向型という気質は、誰もが生まれながらに持っているものだからです。
具体的にいうと、内向型の人と外向型の人は遺伝子と脳の構造がそもそも違います。
内向型と外向型の違い①D4DR遺伝子
D4DRとはドーパミンD4受容体タンパク質のことで、D4DR遺伝子は神経伝達物質のひとつであるドーパミンの感受性に関与する遺伝子になります。
ドーパミンがモチベーションや幸福感などに関係しているのは、よく知られているでしょう。
やる気がみなぎっている状態を、「ドーパミンがドバドバ出ている」と表現したりしますよね。
D4DR遺伝子は別名「新奇性(※)追求遺伝子」と呼ばれ、好奇心を司るもの。
内向型の人はこのD4DR遺伝子が短く、外向型の人は長いことがわかっています。
(※)新奇性とは目新しい、物珍しいといった意味
D4DR遺伝子が短いとドーパミンの感受性が高くなり、少量のドーパミンで多幸感が得られますが、遺伝子が長いとドーパミンの感受性が低く、より多くのドーパミンを得ようとさらなる刺激を求めます。
気質 | D4DR遺伝子 | ドーパミンの感受性 | 刺激への反応 |
内向的 | 短い | 高い | 少しの刺激で満足 |
外向的 | 長い | 低い | 多くの刺激を求める |
同じ刺激を受けても、内向型の人と外向型の人では受け取り方が変わるので、内向型の人が満足する刺激では外向的の人には物足りず、外向的の人が満足する刺激は内向型の人には強すぎて疲れてしまうのです。
内向型と外向型の違い②脳の構造
外向型の人の脳は外からの刺激が短い経路で信号として伝わるのに対し、内向型の人は経路が長く、信号として伝わるまでに脳の多くの部分が刺激されます。
また、内向型の人の脳で辿る経路には右前頭島皮質や海馬があり、これらには長期記憶が保存されているため、内向型の人は目の前の相手と話しながらも、過去の記憶を呼び起こして情報を照らし合わせるなど、作業がどうしても多くなりがち。
この違いは、悩むより即行動、初対面の人でも会話が弾む外向型の人と、考えすぎて思い立った行動がとれない、雑談や会話が苦手な内向型の人の特徴にも当てはまりますよね。
【注意】内向型の人も外向型の気質を持っている
人はそもそも、内向型と外向型の両方を持っています。
内向型の人は全員が100%内向型の気質というわけではなく、人によって割合は違い、内向型であっても親しい人の前ならはしゃいだり、興味や関心の高い話題には熱が入ってしゃべりすぎたりと、まるで外向型であるかのような一面も持っている人は多いのです。(逆も然り)
ただし、生まれ持った遺伝子と脳の構造によって、内向型の人の外向性の割合が内向性よりも高くなることはない、という話ですね。
成長の過程における環境などが影響し、生まれたときの気質の割合がずっと同じではないものの、内向型と外向型が入れ替わることもないのです。
内向型から外向型に変わる必要がない2つの理由
内向型から外向型に変わりたいと思うのは、内向型の人と比べて外向型の人のほうが、幸せそうで得をしているように感じるのも理由ではないでしょうか。
しかし、内向型だから外向型の人よりも幸せを感じにくかったり、損をしやすいわけではありません。
その理由をご紹介します。
幸せを感じるのに外向型か内向型かは関係ないから
自己肯定感と幸せを感じる度合いには相関関係があり、自己肯定感が高い人は幸福度も高く、反対に自己肯定感が低い人は幸福度も低いとされます。
あくまでも一般論ですが、内向型の人は内向型である自分を否定しやすく、「外向型にならなければ」と思って生きてしまいやすいため、自己肯定感が低い人が多いです。
一方、外向的な人は、より強い刺激を求めて多くの人と関わったり積極的な行動をとることから、心理状態がポジティブになりやすく、自己肯定感が高いといわれています。
・・・それなら、やっぱり外向型にならないと幸せになれないのでは?と思いますよね。
自己肯定感とは本来「ありのままの自分を肯定すること」
それが巡り巡って「能力や評価を肯定する」→「自分を価値のある人間と捉える」のような言い回しになっていて、自己肯定感を高めるには自分に価値を見出さなくてはいけないと思っている人が多いです。
自己肯定感は言い換えれば、どんな自分でも受容することなので、外向型の人の自己肯定感の高さは、「自分には高い能力があって他人から評価されている」からくるものではなく、自分の思考や行動を自分らしさとして受け入れているからこそ、なんです。
だから内向型の人も、自分を受け入れて認めてあげられれば自己肯定感は高くなり、幸せを感じやすくなります。
内向型だけが損をしているわけではないから
内向型の人は何事もアピールするのが下手で、自分の意見をうまく伝えられず、こうした悩みを相談する人間関係も築きにくいなど、人生において損をすることが多いと思っていませんか。
対して外向型の人は、アピール上手で自分の意見も的確に述べられるので、人間関係が充実して人脈から発生するチャンスも多く掴みやすい。
これらは一理ありますが、だからといって内向型が必ず損をして、外向型が絶対に得とは言い切れません。
外向型の人は多くの人と出会い、自己アピールや意見を述べる機会が増える分、人間関係などでのトラブルも増えるからです。
しかし、外向型の人からこうした悩みはあまり聞きませんよね。
それは、問題の捉え方の違いがあるからで、内向型の人からすれば卒倒してしまいそうな大トラブルでも、外向型の人にとっては「なんとかなる」と構えられたりしています。
本人に切迫感がないのは羨ましいものの、自覚がないままに、大きな失態や損害になるリスクは高いといえます。
内向型は小さな損でも大きく受け止めてしまう上、なかなか忘れることもできないので長く苦しむタイプで、外向型は小さな気づきを見過ごしてしまい、ある日突然ドカンと大きな痛手を負いやすいタイプ。
どちらが得で損をしていると、一概には決められませんよね。
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【体験談】外向的から内向型に変わった50代主婦の現在地
内向型の人は外向型には変われませんが、外向型のように振る舞うことはできます。
実は、私自身がそうでした。
当時は振る舞っている自覚はなく、それが本当の自分だと思っていました。
内向型(とは気づいていなかった)の幼少期
幼少期は体が弱くてほとんどを家の中で過ごし、幼稚園は1/3も通えなかった私は、小学生になっても中学年までは教室の隅でおとなしく本を読んでいるような子どもでした。
転校したときは初日から一週間、教室で毎朝泣き続けたり、私が意地悪されているのを見ていた子が帰りの会の議題に上げて、クラス全員の前で「ごめんね(意地悪した子)」「いいよ(私)」をさせられたりして、後から担任の先生から親に連絡が入ったことも。
家では明るく活発だったので、親は学校から伝えられる話がにわかには信じられない様子でした。
内向型の人は積極的な人付き合いを避ける傾向にあるといわれていますが、1対1のコミュニケーションなら得意な人がいたり、家族や特定の友人など気を許した関係であれば深い付き合いができる人もいます。私も家族の前では素の自分を出しやすかったのだと思います。
外向型を装っていた10代~20代
小学校高学年になると、外向型を良しとする学校や親の価値観を空気を読んで察するようになり、「外向型にならなければいけない(※)」と思うようになっていきました。
元々運動が得意だったこともあって運動部に所属し、そこから劇的に状況が変化します。
得意を生かすことで集団の輪に入っても物怖じせず、自己主張ができるようになっていったのです。
中学・高校の体育大会ではいつもリレーの選手に選ばれ、体育委員長として運営を行いました。
学校祭や修学旅行で司会を務めるなど、運動以外の学校生活でも目立つ生徒だったと思います。
大学時代はバイトや恋愛など人並みに楽しい学生生活を送り、新卒で選んだ職業は営業職。
プライベートでは国内外の旅行や数多くの趣味と、土日はもちろん平日の夜も予定がびっしりあるような毎日をすごしてきました。
完全なる外向的タイプ、典型的な陽キャの人生です。
子ども時代を振り返ると当時は、「元々外向型だったのに病気がちだった事情から、自分は内向型だと思い込んでいただけ(※)」と本気で思っていました。
※私が子どものときは内向型・外向的という捉え方はなかったので、あくまでも自分の気質について内向型の傾向(おとなしい、自分の意見をいわない、気が弱いなど)を認識していたという話になります。
自分の生まれ持った気質にやっと気づいた30代後半
30代で出産をした私は、実家からも義実家からも遠く離れた地でひとり育児に追われていました。
社会から取り残されていく感覚、何より人と関わりなく過ごす毎日に不安を覚え、外に出たいという気持ちで最初は毎日しんどかったです。
ところが、子どもが成長して少しずつ手が離れ、いよいよ待ち望んでいた社会への復帰が見えてくると、自分を外向型だと思っていた私は当然嬉しくてワクワクすると思っていたのに、実際の気持ちは真逆であることに気づきます。
- マルチタスクを必要とする仕事では強いプレッシャーを感じてしまう
- 少ない情報で即答しなければならない電話応対がとても苦手
- 顔合わせや親睦会といった名目のよくわからない人との飲み会が苦痛
- 複数の部署やセクションが連携して行う業務では、締め切り期日や要望にきちんと応えられているか気にしすぎてしまい確認作業を何度も繰り返してしまう
- 新しいことを覚えるのに時間がかかる
社会人として働いていた当時、こうした困りごとは自分の努力が足りないからだと思っていました。
一方で、最初は窮屈でしかなかった子育て中心の生活は、「外に出られないなら家でできることをやってみよう」と、部屋を整えたり、手間をかけてご飯を作ったり、パン作りを始めたりといった工夫により、とても幸せに満ち溢れた時間に感じるようになっていました。
たくさんの友人に囲まれながら、次々と新しいチャレンジする積極的や前向きさが人生を豊かに生きることと思っていた私には、人に会わず、マイペースで、静かに暮らす日々は退屈に思えていたはずなのに・・。
地に足がつき、呼吸が楽にできている感覚を初めて味わったような気がして、もしかしたら私は本当は内向型なのかもしれないと思うようになりました。
50代の今は内向型の自分を受容
- 学芸会や運動会、部活の試合の前日や当日に必ずといっていいほど熱を出していた
- 宿泊研修や修学旅行から帰ってくると翌日は疲れて寝込む
- 同級生に言った些細な一言が気になって眠れなくなり、翌日謝罪すると同級生は何も覚えていなかったということが年に複数回あった
- 悪口や噂話をしないからと、女子のグループからたびたび外された
- 自ら予定をぎっしりと入れるのに、予定が近くなると憂鬱になる
- 学生時代は部活の先輩、大学時代はアルバイト先の店長にいじめをされたが、自分が逃げると他の子がターゲットにされると思って逃げられなかった
- 悪意を向けてくる人の生い立ちや境遇などに同情すべき点があると、「こういう行動をさせているのは本人のせいではない」と思ってしまい、理解をして仲良くなろうと努めてしまう
- 雑談は苦手なのに深い話は延々としてしまう
- 友人の相談には親身に応えるが、自分の悩み事は一切話さない(話すと相手に負担になると思うから)
- 推しのアイドルは生き方や人生観に共感して好きになるため、ライトファンからは「そんなこと考えながら推してるの疲れない?」といわれた
冷静に過去を振り返ってみると、子どものときから学生時代、社会人、子育て期に至るまで内向型の特性があれこれとありました。
学校の行事や部活の試合の体調不良について、当時は「テンション上がりすぎたー」「盛り上がりすぎたー」くらいに思っていましたが、私は他人の感情にちょっと敏感なところがあるので、先生や親をがっかりさせたくない、みんなと一緒にいるときは楽しませなきゃと変に気負いすぎてたのかなと今なら思います。
そういえば、趣味や習い事もグループ行動ではなく、ひとりでできるものや、できるだけ個別に教えてもらえるところを選んだりしていました。
大勢の人と接することを、無意識に避けていたのかもしれませんね。
もっと早くに自分の気質に気づけていたらと思う日もありますが、もがきながら少しずつ点と点を結びつけ、内向型についてたくさん勉強した今は、「自分は内向型であり、それでいい」と心から思えます。
まとめ
世の中には、自分を内向型だとか外向型だとか枠で捉えることなく、ありのままで人生を楽しんでいる人もたくさんいます。
一方で、外向型であるべきという価値観が強い現状では、内向型の人の中には自分自身を否定して、生きづらさを感じていることもあるでしょう。
でも、その生きづらさは内向型だからなのではなく、外向型になろうとしているから感じるものなのです。
内向型である自分を受容し、その特性をうまく活かせるように生活や仕事などを工夫できれば、断然に生きやすくなります。
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